敦賀半島中央に位置する西方ヶ岳、蠑螺(さざえ)ヶ岳は、標高は764m、685mとさほど高くはないが、海から直接立ち上がっているせいか立派に見える。また、冬の季節風に直接さらされているためか、植生もちょっと変わっており、点在する岩もあって、この近辺の山の中では最も垢抜けた山の一つであるといえよう。
両方の山頂からの眺めも素晴らしく、また縦走も楽しめるので、是非一度は登ってみたい山である。また、西方ヶ岳山頂には、この辺りの山では珍しく山小屋があり、天気の悪い日などはありがたい。是非みんなで大切に、またきれいに使っていきたいものである。
登山コースとしては、敦賀半島東岸の常宮集落から西方ヶ岳を往復するか、蠑螺ヶ岳へ縦走し、浦底集落へ下りるコースが考えられる。海抜0mから登ることになるので、思ったより体力を要するので、ファミリーハイキングの場合や、西方ヶ岳までで疲れてしまった場合は、縦走をあきらめ、西方ヶ岳から下山してほしい。縦走の場合は、バスを使うか、別の車を下山地点にあらかじめ廻しておく必要がある。バスの場合は、本数が少ないので事前にバスの時間を確認しておいてほしい。なお、縦走の場合、逆コースも可能である。
本書では、①西方ヶ岳を往復するコースと②西方ヶ岳から蠑螺ヶ岳への縦走コースを紹介するので、体力にあわせて自分のコースを選んでほしい。
①常宮から西方ヶ岳へ ■対象:家族向けハイキングコース
登山口は敦賀半島東岸の常宮神社の横にあり、車で行く場合、敦賀市内から気比の松原を経由して、半島東岸に付けられた道を北に進む。敦賀市内から約20分で、常宮神社に着く。常宮神社は、境内も広く、本殿も立派であり、地元では安産の神様として有名である。また、豊臣秀吉が新羅から持ち帰ったと伝えられる国宝の朝鮮鐘も保存されている。車は、神社手前にある駐車場に置くことができる。なお、バスの場合、JR敦賀駅から福鉄バスが出ており、30分程で常宮神社に着く。
常宮神社右手の旧道を少し行くと、西方ヶ岳登山口の看板が掛かっており、そこを左へ入る。民家の中を抜け、六地蔵の脇を通って、田圃の中の道を行くと、広い登山道が始まる。ここからは、一本道で迷うことはない。階段状の急坂で息が切れるが、周囲はブナなどの自然林で、大変気持ちが良い。若狭の山では、多くの山で植林帯を通るのに対し、このコースはこの先もずっと自然林の中を進むことができる。25分程歩くとちょうど良い岩の休憩所があるので、ひと休みしよう。この岩からの眺めは、自分達の登って来た道のりを正確に教えてくれる。
この岩を過ぎると、やがて道は左斜面をトラバースするようになり、40分程で、銀命水と呼ばれる水場に着く。汗をかいた後の、岩の下から湧き出る冷たい水は何よりの贈り物である。
銀命水から先は、また急坂となり、約25分で天然記念物のオーム岩に着く。このような大きな岩がこの先も所々にあり、このコースのとても良いアクセントになっている。ここから先、道は緩やかとなり、ピッチは上がる。そして空が広がり、標識が見えると、ヒョコンと西方ヶ岳山頂に立つことになる。オーム岩から約40分である。
天気が良ければ、山頂標識からちょっと入った所にある海の見える岩場でゆっくり眺望を楽しむと良い。眼下には敦賀湾が広がり、越前海岸や越美国境、若狭の山々、そして条件が良ければ白山までも展望できる。山頂横には、山小屋が建っており、天気の悪い時などは助かる。
頂上での眺めを十分楽しんだら、下山するとしよう。下山は元来た道を引き返すが、1時間半弱で下山することができる。なお、体力に余裕があれば山頂からカモシカ台まで往復してくるのも良いだろう。(次項参照)
■コースタイム
常宮神社→25分(15分)→展望台→40分(25分)→銀命水→25分(15分)→オーム岩→40分(25分)→西方ヶ岳
( )内は、逆コースのコースタイム
②西方ヶ岳から蠑螺ヶ岳への縦走 ■対象:中級コース
西方ヶ岳へは前項を参照されたい。さて、ここからは半島の縦走が始まるが、この先もかなり時間がかかるので、縦走するのであれば、十分に時間と体力に余裕を持って出発しよう。
ここからの半島の縦走は、山登りの楽しさを倍加させてくれる。その開放感は他の1000m未満のヤブ山では味わえないものがある。山小屋の横手から道は始まり、小さな上り下りを繰り返すと、約30分でカモシカ台への分岐がある。カモシカ台には大きな岩があり、カモシカ気分で展望を楽しめるので、ちょっと寄り道してこよう。分岐から標識に従い、左手に入り一旦下り、登り返すと、5分程でカモシカ台に着く。また、カモシカ台手前の鞍部右手には、尼池と呼ばれる湿地があり、シーズンには水芭蕉の花を見ることができる。
分岐に戻り、蠑螺ヶ岳へ向かおう。この辺りの尾根も大変気持ちの良い所で、ブナなどの広葉樹、そして冬の厳しさからか横に曲がった木々などを楽しみながら進むことができる。やがて蠑螺ヶ岳への登りとなるが、初夏の頃にはベニドウダンツツジが美しい。少しの登りで、山頂に着くが、先ほどのカモシカ台への分岐から約35分の道のりである。
蠑螺ヶ岳山頂からも360度の展望が楽しめる。ここも、東側に少し下った岩の上からの展望が良い。眼下に見える水島が青く輝き美しく、また、振り返れば今まで歩いて来た長かった尾根が幾重にも重なって見える。ここからは、長い下り道が待っているので、ここからの景観を脳裏に焼きこんで下山にかかろう。
蠑螺ヶ岳からは、尾根道を下って行くが、10分程で一枚岩と呼ばれている所を通過する。この辺りは大きな岩が立ち並んでおり、通過するのに手間がかかる。子供が一緒の時などは気を付けて進んでほしい。やがて道は右に下り始めるが、山頂から40分程で、長命水と呼ばれる水場に着く。道の左手に沢が流れており、冷たい水が流れている。これからは急な下りが続くので、ちょっと一息入れよう。
長命水からはひたすら下ることになる。急な所が多いので、雨の後などで道がぬかるんでいると苦労させられる。原子力発電所が見え始め、小川の流れる台地状の所へ来れば、農道はすぐである。農道沿いに少し下ると、やがて日本原電の明神寮の横を通り、県道に出て、長かった下りから解放される。県道まで長命水から約1時間の道のりである。蠑螺ヶ岳へ先に登る場合や、縦走用の車を廻しておく場合は、先ほどの農道沿いに車を止めることになる。
なお、コミュニティーバスの浦底バス停は、県道を右に500m程行った所にある。(2016.4.3再踏査)
■コースタイム
(常宮神社から西方ヶ岳まで、2時間10分)
西方ヶ岳→30分(40分)→分岐(カモシカ台往復15分)→35分(25分)→蠑螺ヶ岳→40分(60分)→長命水→60分(90分)→県道(浦底)
( )内は、逆コースのコースタイム