若狭の山と峠 05 頭巾山

 福井県おおい町名田庄にあるこの山は、県境の山としては重要な位置を占めている。北へは尼来峠から三国岳へと続く尾根、南西へは長老ヶ岳への尾根、そして東へは掘越峠から八ヶ峰へと続く若丹国境尾根といった三つの尾根を分岐するその中心に位置している。また、小浜湾へ流れ込む二級河川南川の源流でもある。山名の由来は、修験者達の被っていた「ときん」からきているとされている。
 また、この山は、シャクナゲの自生地として知られており、開花時期の4月下旬から5月上旬にかけては、春山登山としては絶好の山となる。また、途中にある野鹿の滝は、落差36mの立派な滝であり、滝見物をかねて付近の散策をするのも良いだろう。
 頭巾山への登山ルートとしては、福井県側の名田庄の納田終からと京都府綾部市の奥上林・古和木からのコースがあるが、本書では納田終からのコースを紹介する。


コース紹介

①野鹿谷から頭巾山へ     ■対象:家族向けハイキングコース
 小浜から国道162号線を南川に沿って名田庄村に入り、村役場のある久坂を過ぎ、頭巾山青少年旅行村や道の駅のある納田終に入る。道の駅の少し手前で162号線から県道771号線に入り、老左近の集落を過ぎてさらに南川沿いに行くと、大きな堰堤が見えてくる。堰堤を右手に見ながらさらに進むと橋があり、橋の左側に頭巾山への案内図が立っている。頭巾山へは野鹿橋の手前で野鹿谷の林道へ入る。車は登山口の近くまで進むことができ、道も野鹿の滝の少し上まで舗装されているが、工事等で通行止めになっていることもあるので、その時は野鹿橋の手前に数台駐車スペースがあるのでそこに止めると良い。また、この先の野鹿の滝付近にも止めることができる。
 野鹿橋から2.5km位進むと野鹿の滝があり、大きな標識が立っている。標識の近くから野鹿の滝を見ることもできるが、足の下になるため、川まで下りて滝を見上げたいものである。遊歩道も整備されており、名田庄村の名勝地だけあってなかなかの迫力である。
 野鹿の滝からさらに1.5km位進むと登山口の標識がある。登山口は川の対岸にあり、一旦河原に下りてから山道に取り付く。登山道は杉林の中をジグザグに登っているが、しっかりと踏み固められた道で見失うことはないだろう。
 さらに登って行くと尾根に出る。この辺りから大きなシャクナゲの木が現れてくる。さらに尾根を進むと巨岩の下に着くが、この辺りにはシャクナゲが群生しており、またイワウチワ等も多く見られる。
 巨岩の下を少し巻いて急な斜面を登ると、見晴らしのきく尾根に出る。熊笹の中を登って行くと左前方に頂上の社が見え、しばらくで主稜線に出て約100mで頂上である。稜線上には京都府綾部市の古和木からの立派な登山道が付いており、こちらからの登山者も多い。
 頭巾山の山頂には権現さんを祀った社と、『おこもり堂』と呼ばれる小屋があり、毎年4月23日には大祭が行われ、多くの参拝者でにぎわっている。登山道も、地元の古和木や名田庄の方たちが大祭のために整備されており、快適に歩くことができる。
 頂上からは、北には小浜湾が広がり、また久須夜ヶ岳、飯盛山なども良く見える。さらに、北西には青葉山、西には弥仙(みせん)山、東側近くには堀越峠や八ヶ峰が見え、実にすばらしい眺めである。  

■ コースタイム
 野鹿橋→60分(50分)→野鹿の滝→25分(20分)→登山口→60分(40分)→頂上
 (  )内は、逆コースのコースタイム

 

地図