若狭の山と峠 33 岩篭山

 岩籠(いわごもり)山は、敦賀三山(野坂山、西方ヶ岳、岩籠山)のひとつであり、登るコースにより、いろいろな楽しみのある山である。こぢんまりとした山頂からの眺め、そして、山頂付近のインディアン平原と名付けられた地点に点在する露岩と、楽しみいっぱいの山である。春は当然新緑が美しく、夏の市橋コースでは、途中の沢で水浴びもできる。また、秋には紅葉とインディアン平原にススキがたなびく姿が楽しめる。

 岩籠山への一般的な登山ルートとしては、以下のルートがある。

 ①敦賀市の市橋から沢沿いに登るルート

 ②敦賀市の山集落から尾根伝いに登るルート

 ③敦賀市の駄口からの尾根沿いのルート

 ①の市橋からのルートは、沢沿いを登るルートで、夏でも暑さが苦にならず、また、春の新緑、秋の紅葉も楽しめる。ただし、沢沿いの道なので、雨で川が増水している時には避けた方が良く、また、近年、大水で沢が荒れているので、山慣れない人は、避けた方が良さそうである。

 ②のルートは、ずっと尾根伝いのコースであるが、ブナなどの広葉樹林に赤松の点在するきれいな尾根であり、①とはまた趣の異なるルートである。途中には、熊笹とススキとそして低い松林の日本庭園風の所もある。

 ③のルートは、途中に綺麗なブナ林が広がっており、また、道も良く整備されている。尾根筋を通るルートで、安心して登ることが出来る。

 本書では、3つのルートを紹介するが、③のルートが、現状ではメインルートとなるであろう。なお、交通手段がうまく確保できれば、それぞれのコースを繋いで縦走することも楽しい登山となるであろう。ただし、市橋への下山は避けた方が良さそうである。

           (2016.09.20駄口コース追加により、見直し)


コース紹介

①市橋から岩籠山へ        ■対象:家族向けハイキングコース
 敦賀市内から国道8号線を南に進み、市橋の信号を右折し、すぐに岩籠林道に入る。なおバスを利用する場合は、JR敦賀駅から出ているJRバスを市橋のバス停(敦賀から約20分)で降り、8号線をそのまま少し進むと、信号の所へ出る。
 林道を進むとすぐに北陸線の上下線2ヶ所のガードをくぐり、さらに進むと右手に登山口の駐車場がある。車が20台位置ける立派な駐車場で、バス停から歩いた場合、約20分程の道のりである。駐車場の入り口には、「熊出没注意」の看板が立てられており、熊よけの鈴等を準備しておいた方が良い。
 駐車場からもしばらく林道が続いており、すぐに林道は二手に分かれるが、ここは左手に進む。その後、田畑の中の道を歩くと、林道が切れ、駐車場から5分程で登山道になる。自然林と熊笹の中の良い道を進むこと5分強で、道が二手に分かれる。左手の道は、導水路沿いに付けられているが、ここは右手の道を行く。しばらくは左手に沢音を聞きながら進むが、駐車場から約20分程で沢に降り、すぐ沢を渡る。ここからは沢沿いの道となり、何回か沢を渡りながら進む。沢には、ナメ滝や5m程の滝がいくつかかかっており、自然林の中を気持ち良く進むことができる。道はしっかりしているが、沢を渡るポイントは注意してほしい。また、沢沿いの道で滑りやすいので、注意が必要である。
 沢に入って約15分で、岩床のきれいな所へ出るが、さらに5分程で、最初の堰堤に着く。この堰堤は、古い石積みの堰堤で、まわりの景色と全く違和感がない。30m程先に2番目の堰堤があるが、その間にはテントを数張り張れる平地がある。広々とした気持ちの良い場所で、この辺りで水遊びをして、弁当を食べて帰ってくるのも家族連れには良いだろう。先ほどの岩床の所か、この辺りが最初の休憩場所として好適である。
 この先も沢沿いの道を、何回も沢を渡りながら、また堰堤を越えながら進む。5番目(最後)の堰堤の所は二俣となっており、堰堤は左側の沢にかかっているが、ここは右側の沢を進む。木漏れ日の中、気持ち良く進んで行くと、傾斜も急になり、だんだんと沢の水量も減ってくる。最初の堰堤から、約40分程で沢の水が切れるので、水の補給が必要な場合は、早めに補給しておいた方が良い。
 さらに登りを続けると、沢沿いに直登する道と、右の尾根に向かう道に分かれる地点に着く。右の尾根に向かう道がメインの道であるが、直登する道にも目印が付けられており、迷うことなく岩籠山手前の鞍部に出られる。時間的には、直登するコースが早いが、ここでは、右の尾根に向かうこととする。ブナ林の中の急な斜面をジグザグに登って行くと、やがて支尾根の上に出て、その尾根上をさらに登って行くと、先ほどの分岐から約15分で峠のような広場に出る。ここは、右の夕暮山(反射板方面)と左の岩籠山との分岐で、ブナ林と熊笹の気持ちの良い所である。
 この分岐からは、尾根の右側をトラバース気味に下って行く。下り過ぎではないかと心配になる頃に、再び登りとなり、尾根上の鞍部に出るが、ここの左側に先程分かれた沢沿いに直登してくる道が上がって来ている。この先も尾根の右側をトラバースするように進む。この辺りから熊笹が道に覆い被さってきて鬱陶しいが、道はしっかりしている。やがて見晴らしがきくようになると、左手に山頂への道があり、わずかの登りで山頂に着く。夕暮山の分岐からは約30分の道のりである。
 山頂は、こぢんまりとしており、三等三角点がある。山頂からは、360度の展望を楽しむことができる。敦賀市街地と敦賀湾を挟んで、右に越前方面、左に敦賀半島の山々。さらにその左には、野坂山、反対側には湖北、湖東の山々が見渡せる。
 山頂からの眺めを楽しんだら、インディアン平原に向かおう。山頂からは、先程登って来た道ではなく、東側に下って行く。鞍部から少し登ると、一面の熊笹に道を閉ざされる。胸までの熊笹の中、足下の感触を頼りに道を探って行くと、巨岩の点在するインディアン平原に出る。山頂からは、10分程の道のりであり、是非訪れてほしい。
 帰りは、元来た道を引き返すことになるが、岩籠山への登りの手前を左に行けば、再度山頂に行くことなく戻ることができる。なお、沢沿いの道は、特に下りが滑りやすいので注意して下山してほしい。

■コースタイム
 市橋バス停→20分(20分)→登山口駐車場→40分(30分)→最初の堰堤→70分(50分)→夕暮山分岐→30分(30分)→岩籠山→10分(10分)→インディアン平原
  (  )内は、逆コースのコースタイム

 

②山から岩籠山へ         ■対象:初級コース
 小浜方面から車で、旧の国道27号線を敦賀方面に向かい、粟野の交差点を右折し、山集落へ向かう。山の集落を過ぎ、黒河林道の入り口で左折し、橋を渡る。急な坂を登り、家が途切れた所で右に登って行く道がある。この道を進むと、すぐに舗装が切れ、300m程進んだ所で堰堤にぶつかり、行き止まりとなる。ここが登山口で、この付近には5台位駐車可能である。
 身支度を整えたら、堰堤の手前に架かる橋を渡り、堰堤を右側から越える。堰堤のコンクリートを越え、少し左側にある大きな岩の横にある道に入る。雑木林の中、左に沢音を聞きながらしっかりとした道を進む。2番目の堰堤も右側から越え、右側の林に取り付く。やがて道は尾根道となり、赤松の点在するブナなどの広葉樹林の気持ちの良い道を進む。急ではないが、同じような尾根道を50分程進むと、平らな所に出る。ここまでずっと登りだったので、ほっと一息できる所である。
 ここで尾根は少し左に曲がり、なだらかな尾根が続く。木の間からは、夕暮山方面が望める。ロープの張ってある急な所を越えると、右へトラバースするように進み、やがて敦賀方面が見えるようになる。つつじ、あじさいなどの低木が見られるようになり、熊笹、ススキの間に背の低い松が点在する日本庭園風の場所を過ぎる。ススキと熊笹の原っぱを抜けると、夕暮山(720.4m)の山頂に着くが、山頂といっても尾根の出っ張りのような所である。ここから、もう一つのこぶを越えると、すぐに反射板のあるピークに着く。ここまで来ると、四方八方の展望が開け、岩籠山がすぐそこに見える。先ほどの尾根が平らになった所からここまで約50分の道のりである。
 反射板の所から下って行くと、約5分で市橋から上がって来た道と合流する。この合流点から先、岩籠山、インディアン平原へは、①の市橋からのコース案内を参照されたい。
■コースタイム
  登山口→50分(30分)→尾根上の平らな所→50分(35分)→夕暮山反射板→5分(5分)→市橋への分岐→30分(30分)→岩籠山→10分(10分)→インディアン平原
  (  )内は、逆コースのコースタイム

 

③駄口から岩籠山へ         ■対象:家族向けハイキングコース

 敦賀市内から国道8号線を南に進み、疋田で右折し、国道161号線に入る。しばらく走ると、右手にドライブイン「しのはら」があり、左手の広いスペースが登山口の駐車場となっている。

 道路の反対側にある登山口から登り出す。登り出すとすぐに右手に獣避けのフェンスがあり、フェンスに沿って登ると、沢沿いに進むようになる。すぐに右手の斜面に取り付き、登山口から15分程で、明瞭な尾根に出る。

 ここからは、杉の植林と雑木の境界のなだらかな尾根をゆっくりと登る。やがて道は少し急となり、コブをいくつか越えていく。尾根に出た所から約30分で、ロープの設置された岩場に着く。特段危ないこともなく、難なく越えると、岩の点在する尾根道となる。林も自然林と変わり、やがて右からの尾根と合流する。ここを左に進むと、すぐに標高550m程のピークに着く。ここまで、登山口から1時間10分程である。

 正面に2つのピークが見えるが、ここからは左のピークに向かって登る。やがて、南側方面の展望が開ける。この先、ブナの林が現れるが、そこを過ぎると、道の周りの雑木や草が邪魔となる。やがて、P677手前の右折点に出る。ここまで、550mピークから30分程である。

 右折すると急なな下りとなる。ここは、右手の斜面の崩落のため、う回路として付けられた道のようである。ここを下りきると、素晴らしいブナ林が現れる。ブナの木の下には、背の低い熊笹が絨毯のように敷きつめられている。ここを越えると、やがて木が低くなり、展望が良くなる。急な登りとなるが、山頂方面も望まれる。しばらくで、道はP708の左側直下を巻いて行く。左手には、ブナ林が広がり、この辺りから先は、気持ち良い所である。やがて、急な登りとなり、しばらくの頑張りで、インディアン平原の左端に出る。右に進めば、すぐにインディアン平原の奇岩にたどり着く。ここを直進し、少し登ると岩籠山山頂に着く。(2016.09.16踏査)

■コースタイム
  登山口→1時間10分(50分)→550mピーク→30分(20分)→P677手前右折点→30分(20分)→P708直下→20分(15分)→

インディアン平原→10分(10分)→岩籠山

  (  )内は、逆コースのコースタイム

地図