雲谷山は、若狭町と美浜町の町境にある標高800m足らずの山である。若狭町側の登山口には、三方石観音があり、ここの本尊は弘法大師の作と伝えられている。入唐以前の弘法大師がこの地に立ち寄られた際、一夜にして花崗岩に観音像を刻まれたが、彫刻半ばで夜明けを告げる鶏の声を聞き、右手を刻むことなく下山され、何処へとなく立ち去られたという。右手のない片手観音は、手足のけがや病気に御利益があるということで、境内の御手足堂には、全快した人達が奉納した木製の手や足がうず高く積まれている。
三方石観音から標高380mにある第三展望台までは遊歩道が整備されており、三方五湖や日本海の展望を楽しめる手軽なハイキングコースとなっている。また、石観音の横手から第三展望台直下まで林道が付けられているが、昨今の台風等の影響で、途中までしか入れない可能性がある。
雲谷山山頂付近は、樹木に囲まれおり、以前は美浜町方面の木が伐採されて、若狭湾を眺めることが出来たが、現在は再び展望が悪くなっている。また、山頂周辺にはブナの原生林が広がっており、たっぷりと森林浴を楽しむことができる。
登山コースとしては、前述の三方石観音からのコースと、美浜町の新庄地区からのコースがある。石観音からのコースは、途中の第三展望台までは、散策コースとしてはとても良いが、全体としてコースが長い。
一方、新庄からのコースには、岸名集落からのコースと、屏風ヶ滝からのコースがあり、途中で合流している。岸名からのコースは、道が良く整備されており、短時間で山頂に至ることができる。また、屏風ヶ滝からのコースは、滝の見物とあわせて歩くメリットはあるが、登山道が急なのと、一部、わかり難いところがあるので、要注意である。
その他、最近、美浜町の興道寺地区からの道も歩かれているが、距離が少し長く、展望もないので、あまり一般的ではない。(2014.9.7修正)
①新庄(岸名集落)から雲谷山へ ■対象:初級コース
小浜方面からの場合、国道27号線を敦賀方面に向かい、美浜駅前の信号の次の信号(役場口)を右折し、美浜町役場の横を通って新庄方面に向かう。約6km走り、正面に嶺南変電所が見えてきた頃に、岸名集落に着く。集落は、左手にあるが、右に石の記念碑があるので、そこを右折し、Uターンするように農場に続く舗装された道を進む。曲がりながら登って行くと、T字路となりここを左に進むと左手に作業小屋がある。この先20m程先に、猪よけの電気柵が林道をふさいでいるのが見える。車は、小屋の山側の空き地に2台程止めることができる。
この道を電気柵の方に進むと、道は右に曲がるが、電気柵を乗り越え、真っ直ぐに続く草の生えた林道へと進む。電気柵の向こうに、登山口の標識が見える。電気柵には、電気が通っているので要注意である。電線を外すことができる所があるので、2~3本外してまたぐと良い。ただし、元に戻すことを忘れないようにしてほしい。
草の生えた林道はすぐに細くなり、杉林の中、右手に「登山道」の標識がある。直進する道の方がはっきりしているが、ここは右に入る道を山に向かって入って行く。道は、右手の尾根に向かって続いており、杉林の中を5分ほど進むと、杉林を抜け、右手に送電線鉄塔を見る。15分ほどの急登の後、はっきりした尾根に出るが、赤松の点在するきれいな尾根である。急な登りとなったり、細い尾根上を進んだりする内にこぶを越える。道はすこぶる良く、展望はないものの、気持ちの良い登山ができる。
登山口から1時間程で、下向山反射板に出る。反射板手前あたりから道に下草が生え、反射板を過ぎると木も低くなり、展望が広がる。三国山、赤坂山、野坂岳、岩籠山といった山々と新庄方面を望むことができる。
反射板の所から少し進むと、木の橋があり、それを過ぎると、再び樹林帯となる。やがて、道は、右側の谷沿いに進むようになり、反射板から約15分で左から路が合流する。この道は、次項の屏風ヶ滝からの道である。この合流から少し登ると、再び左へ道を分岐する。左側の道の方がはっきりしているが、この道は雲谷山反射板への道で、雲谷山へは、標識に従って右の道を進む。この先道は細くなり、沢沿いの急登となるが、10分程で稜線に出る。山頂へは、稜線を右に進む。ここには、標識が設置されているが、このコースを下山路に使う場合、見落さないよう注意してほしい。
さて稜線に出た所から右に尾根道を5分程で雲谷山山頂に着く。山頂には、三角点と山頂を示す看板がある。周りには木が繁っているが、美浜町方面の一部が伐採されており、若狭湾の展望が広がる。また、周辺にはブナ林が広がり、十分森林浴を楽しむことができる。なお、昼食をとる場合、若狭町側にちょっと下った所に小さい広場がある。
■コースタイム
登山口→60分(40分)→下向山反射板→15分(10分)→屏風ヶ滝分岐→10分(5分)→稜線→5分(5分)→山頂
( )内は、逆コースのコースタイム
②新庄(屏風ヶ滝)から雲谷山へ ■対象:中級コース
前述の岸名集落からの登山口を過ぎ、さらに進むと嶺南変電所に着く。変電所手前から変電所裏手に回る道を進むと、小さな橋の手前に右に伸びる林道があり、標識も設置されているので、そこに入る。すぐに行き止まりとなり、大きな案内看板と駐車スペースがある。
ここから登山道が始まるが、すぐに獣避けのフェンスがあり、扉を開けて中に入る。この先は、左岸の杉林に付けられた遊歩道を進む。時折、右岸、左岸と沢を渡りながら進む。沢を渡るところには立派な橋が架けられており、途中分岐する道もあるが、標識も整備されているので心配はない。途中、やまめの淵や、乙女の滝なども出てくる。途中、高巻くところもあるが、道はしっかりしており、問題ない。また、要所要所に、鎖も設置されていて、安心である。最後は、手すりの付いた橋が2つ連続し、それを過ぎて、右手に登ると、休憩舎に着く。ここまで約40分の道のりである。
ここは広場となっており、左手に白滝(平滝)があり、大きな岩の上を水が流れている。屏風ヶ滝は、この少し先にあるので、見物してこよう。白滝の上で、右手に登る道は、忠魂碑に行く道で、屏風ヶ滝へは、左手に回り込むように進む。3方を岩に囲まれ、20mの落差で落ちる滝はなかなか迫力がある。また、滝水の流れる岩には、不動明王の彫刻もしてあり、それを見ることも出来る。
雲谷山へは、先ほどの広場の所から、2ルートで道が付いている。広場の手前側右手には鎖が付けられており、尾根を直登するルートとなっているが、その先の尾根が狭く、岩場のようになっているので、要注意である。安全なのは、それより屏風ヶ滝側の急斜面に付けられたルートである。看板も設置されているので、そこから取り付く。崩れかけた階段とロープがあるので、それを目印に登る。30m程登ると、道は左手にトラバースするように沢に沿って進む。小さな尾根を越えた所で、尾根を登っていく道があるが、雲谷山へは、さらにトラバースしていく。この辺りはちょっと迷いやすいので、赤いテープを参考に進む。
さらにトラバースしていくと、やがて道は、右手の斜面へと登っていくが、この辺りも少しわかりにくい。テープなどを頼りに、慎重に進んでほしい。すぐに道は、小さな尾根に付けられた道へと進むが、ここからははっきりとした道が続いている。最初のうちは急であるが、しばらくでなだらかになり、はっきりとした稜線に出る。ここまで、広場から約20分である。この稜線を左に進むが、右にも道が付いており、下ってくる場合は、直進しないように注意が必要である。なお、右に進むと、広場の鎖のところに出る。
ここからは、雑木林に覆われた尾根を登るが、道ははっきりしている。傾斜はかなり急であるが、気持ちの良い尾根道である。急な尾根道が終わり、一旦平坦な場所に出る。ここは休憩に良い場所である。
ここから道はゆるく登り出し、右からトラバースするように、次のピークの登る。ピークから下った左手は、沢の源頭部となっており、きれいな地形である。ここまで、稜線に出たところから、約40分である。 ここからは、道は右にトラバースしていく。しばらくで、道は少し下り気味となり、沢を渡る。この辺りは道がわかり難いので、テープを探しながら慎重に進んで欲しい。草地から、苔むした湿地帯に入っていく。湿地を過ぎると、右手の斜面に、尾根に向かって道が付いている。かなりの急傾斜であるが、5分強頑張れば、岸名からの登山道に合流する。トラバース開始地点から、40分程である。
この先は、この登山道を使って、山頂へは、15分程である。下山は、岸名へ下った方が良いであろう。(2014.9.7最終踏査)
■コースタイム
駐車場→40分(30分)→屏風ヶ滝→20分(15分)→稜線→40分(30分)→トラバース開始地点→40分(40分)→岸名登山道との合流→15分(10分)→山頂
( )内は、逆コースのコースタイム
③三方石観音から雲谷山へ ■対象:中級コース
国道27号線の横にある三方石観音の大きな駐車場に車を置き、横の階段を登ると石観音の本堂に着く。お参りを済ませ、身支度を整えたら、本堂の横に登山口と書いた看板があるので、そこから登り始める。道は雑木林の急斜面にジグザグに付けられており、15分程で第一展望台に着く。ここは展望台というの名の割には、あまり展望がきかない。さらに15分程遊歩道を進むと、第ニ展望台に着く。ここからは三方湖や水月湖の眺めが素晴らしい。さらに第三展望台に向かって進むと、下から林道が上がって来ている。第三展望台には展望小屋もあり、ここまでハイキング気分で登って来るのも良いだろう。ここからは三方五湖全部を見渡すことができる。なお、第三展望台の直下まで、石観音から林道が上ってきているので、急ぐ場合、ここから登っても良いだろう。
第三展望台からさらに尾根上の遊歩道を進む。かなり歩いた頃に、遊歩道から分かれ左に入っていく道がある。ここには標識があり、この道が雲谷山への道である。
ここからは長い山道となり、尾根道を上り下りを繰り返しながら登って行くことになる。展望のきかない雑木林の中を進み、小ピークを越えた所で、右に水場がある。
その後、一旦右の谷筋を通り、さらに進むと大きな岩の所に出る。さらに進むと、右に下って行く道のある分岐に着く。この分岐には、標識が設置されているものの、下山時には要注意の場所で、下山時に左(登って行く時は右)に下って行く道に入らないように注意が必要である。
この分岐を過ぎ、登りにも飽きてきた頃、樹木の様相が変わり、山頂に出る。山頂は木に覆われているものの、美浜町方面が切り開かれており、二等三角点と山頂の標識がある。また、周囲には広大なブナ林が広がっており、林の美しさを楽しんで欲しい。
帰りは、もと来た道を引き返すが、脇道に入らないように注意して欲しい。約2時間の道のりである。
■ コースタイム
石観音登山口→15分(10分)→第一展望台→15分(10分)→第ニ展望台→15分(10分)→
第三展望台→120分(90分)→山頂
( )内は、逆コースのコースタイム
④興道寺地区から雲谷山へ ■対象:中級コース
地理院地図の1/25000の地図には、興道寺地区の少し山手側から、雲谷山に登る道が点線で記載されている。古くは、生活道をして使われていたようで、途中には峠道のような風情のある場所もある。距離が長く、展望も利かないことから、下りのサブルートとして使うことをお勧めする。以下、下りルートで、コース案内を記載する。
雲谷山山頂からは、ブナ林の中、三方石観音方面へ進む。3分ほどで、石観音への道と分かれ、右の尾根に入る。雑木林の中、はっきりとした道が続いている。木々の間からは、美浜町内の景色が見え隠れする。15分程で、ヌタ場に着き、その先は急斜面となる。その先は、ブナも混じる雑木林の尾根を、時には尾根の右や左にルートを取りながら下っていく。単調な下りが続き、やがて、438mの三角点を、右から巻くように通過する。ここまで、山頂から1時間10分程である。
ここからは、赤松混じりの林の中を進む。三角点から、10分強で、矢筈山へと続く尾根の分岐に着く。分岐からは、良い道が右手にトラバースするように続いている。広々とした尾根道となり、ゆっくりと下っていく。標高260m付近で、道は左手の尾根に入って行く。直進せず、掘れた道を辿る必要がある。きれいな林もあり、掘れた道も続くが、この辺りで道がわかり難くなる。右下に堰堤が見えるようになるので、堰堤の下(堰堤の左側)に向けて下る。川(大谷川)に降り、川を渡ると林道になる。最初は、草が生え、林道とはわかり難いが、そのうちはっきりとした林道となり、すぐに駐車可能な空き地に出る。空き地からさらに進むと、獣避けのフェンスがあり、その先、舗装された道を辿れば、10分程で興道寺集落に着く。(2014.9.7踏査)
■ コースタイム
雲谷山山頂→3分→三方石観音道分岐→1時間10分→438m三角点→1時間10分登山口(空き地)
なお、逆コースで登る場合は、3時間強見ておいたほうが良い。