福井県上中町より滋賀県今津町へ走る保坂断層から立ち上がるこの山は、県境稜線よりわずか福井県側に入った位置にある。標高は、780m、二等三角点を有している。高さにおいては不満な感じが残るが、植生が豊富なこととそれが良く保存されていることに安らぎを覚える。この山は、地元では寺山と呼ばれ、山麓の生活との結びつきが感じられる。山麓にある河内集落は、平家の落人伝説の語られる地である。
このように静かな山里や駒ヶ岳周辺も、年月とともに変わってきている。最初の変化は、昭和63年に森林公園・河内の森が整備されたことである。現在は休園中であるが、標高500m地点にキャンプ場などの施設が整備され、そこまで車で上がれるようになった。そして現在は河内川ダムの建設が進められており、水没する旧河内集落は、手前の高台等に既に移転している。これらが、今後この地域の自然環境にどのような変化をもたらすのか気になるところである。
駒ヶ岳への登山ルートとしては、旧河内集落手前の明神谷に少し入った所にある白石神社跡(神社は移転済)から、森林公園を経由して、尾根通しに登るのが本来の登山道であり、本書でもこのコースを紹介する。ただし、河内谷本谷に付けられた河内林道をそのまま車で進み、森林公園に駐車して、歩き出すこともできるので、この方が一般的かもしれない。
また、バリエーションコースとして、山頂手前から県境稜線を東側に進み、P744の手前から福井県側の明神谷林道に下り、白石神社跡に戻る、もしくは森林公園に登り返すコースもある。このコース(明神谷周回コース)も以前遊歩道として整備されており、あわせて紹介する。
この山は、全体的に美しい林におおわれており、若狭地方の中でも美しい林のひとつである。森林公園から駒ヶ岳間は道もしっかりしており、是非訪れてほしい山である。
なお、現在、河内ダムの建設が進められており、登山口へのアプローチや登山道そのものも、順次変わっていくと思われるので、事前に役場等に問い合わせておいた方が良い。
*元マス池から森林公園に登るルートは、現在、通行不能です。 (2022.5.9追記)
①河内から駒ヶ岳へ ■対象:初級コース(森林公園からの往復は、家族向ハイキングコース)
国道27号線を上中町三宅の交差点で分かれ、国道303号線を滋賀県今津町へ向かうと県境手前に熊川地区がある。ここが、登山口のある河内区への入り口である。ここ熊川は古い宿場町で、現在、昔の面影の残る町並みを保存し、観光地としての村おこしが行われている。近くには道の駅もできている。
熊川からは、道の駅の裏側に新しく出来た、新河内集落に向かう道を進む。集落を過ぎ、しばらく走ると、左手に「駒ヶ岳登山口」と書かれた案内板があり、旧道に下っていく道がある。旧道に下るとすぐ左手に林道が分岐している。ここが明神谷の入り口で、以前は旅館があった所である。なお、ここを河内川本谷に沿って直進すると、かっての河内集落を通って、約5kmで現在休園中の森林公園・河内の森に行くことができる。
この分岐を左に入り、明神谷からの登山口に向かうことにする。川沿いにしばらく進むと、左手に新しい道へと登る道が分岐しているが、そのまま直進する。(この道は、その先で通行止めとなっている。)すぐに右手に石の橋が架かっているのが見える。ここが登山口で、林道わきのスペースに車を止める。橋を渡って右側には、以前は「いこいの家明神荘」があったが、今は礎石が残るのみである。
石の橋を渡るとすぐに登山道の標識があるので、沢の左岸(上流から下流に向かって左側)の斜面に取り付く。なお、以前はもう少し先の白石神社跡の所から道が付いていたが、斜面崩落で道が消失したため、新たな道を整備した。杉林の中、沢沿いにしばらく進み、標識に導かれ、対岸に渡る。そこからは、右岸の斜面に付けられた道をトラバース気味に登っていくと、すぐに尾根に出る。ここまで、登山口から5分とかからない。
尾根に出るとはっきりとした道に出会う。以前に遊歩道として整備されており、年月と共に荒れてきているが、しっかりとした道が続いている。常緑樹林帯の急な斜面に作られた道をジグザグに、ときにはコンクリートの擬木で作られた階段を登って行く。しばらくすると、支尾根に出て、傾斜もゆるやかとなる。櫟やシデなどの疎林の中、気持ちの良い尾根歩きを続けると、また階段が現れ、急登となる。しばらくで、最初の小さなピークに着く。なお、ピーク付近で尾根が分岐しており、下ってきた場合、直進し易いので、注意が必要である。下りの場合、右手に入っていく必要がある。そこから一旦下り、ドウダンツツジのトンネルのある二つ目のピークを越えると森林公園内の建物が見えてくる。すぐに、左にマス池への分岐を分け、森林公園の敷地内へと入って行く。ここまで、登山口の白石神社跡から約45分の道のりである。
森林公園は現在休園中で、管理棟や広場、キャンプ場、野鳥観察場など様々な施設が寂しそうに残されている。ここまでは河内林道を使って車で来ることができるので、散策気分でちょっと来てみるのも良いかもしれない。
ここからは、公園内の散策道や管理用の車道などを使って自由に公園内を通過し、駒ヶ岳を目指す。以下は、管理用の車道を使ってのコースを記す。管理棟の横を通って進むと、キャンプ場に着く。小高くなった所から前方に駒ヶ岳を望むことができる。この先道路は尾根の右側を巻くように進むが、左手尾根側はカラマツの林となっている。やがて、林道が右へUターンするように分岐するが、ここは直進する。
一旦尾根に戻り、桜の並木道を進むが、この辺りにも野鳥の観察小屋などが整備されている。ここから、左手にカエデの林に入る道が分岐しているが、1haはあろうかというカエデの純林は圧巻であり、是非歩いてほしい道である。
左手に入った辺りは、道ははっきりしていないが、尾根に添って歩いていけば良い。少し先に進めば、踏み跡程度ではあるが、古い道があり、カエデの広がる林を抜け、15分ほどで、登山口の標識のある地点に着く。
なお、そのまま管理車道を通って、登山口に行くことも出来る。道はまた尾根の右を巻くように進むが、この辺りも美しい林が続く。しばらくで、道路が二俣に分かれるが、ここには、駒ヶ岳まで1時間の標識があり、左に入ればすぐに登山口に着く。
いずれのルートをとっても、ここまで、公園の管理事務所から約30分の道のりである。ここには、登山口の標識があり、左手に杉林を見ながら、登りだす。道は、以前遊歩道として整備されたので、しっかりしている。なお、管理車道は林道として、さらに上まで続いており、登山道と交差することになる。
やがて左手に沼地があり、道は二重稜線に囲まれた沢状の所を登って行く。しばらくで、左手を示す標識があり、それに従って左手の尾根に取りつく。その後急登となるが、それもわずかで、稜線に出る。ここには標識が設置されているが、下ってくる時そのまま直進してしまいやすいので、注意が必要である。
山頂へは、標識に従って、右の美しい樹林の尾根道を行く。この辺りから木の間越しに、遠望がきいてくる。尾根上を進むこと約10分で明神谷への分岐があり、その先さらに5分程の所に、駒ヶ岳山頂がある。なお、山頂手前30m程の所を左に下っていくのが県境稜線である。
山頂は、特に尖峰ではなく、なだらかな稜線上にあり、三角点と山頂標識がある。山頂北側が伐採されており、三十三間山~湖北・武奈ヶ嶽、琵琶湖や湖東の山々が眺められる。帰りは、元来た道を引き返そう。(2014.6.8最終踏査)
■コースタイム
白石神社跡(登山口)→45分(30分)→森林公園→30分(25分)→管理車道終点→45分(30分)→県境稜線→15分(10分)→駒ヶ岳山頂
( )内は、逆コースのコースタイム
②明神谷周回コース ■対象:上級コース
駒ヶ岳山頂から、キャンプ場方面へ5分程戻ると、右手に明神谷への標識がある。右手方向へ向かうと、こちらにもブナ林の緩やかな尾根が続いている。この尾根は、県境尾根であり、以前道が整備されこともあって、現在も快適な道が残っている。秋には、すばらしい紅葉の森が見られる。
県境尾根を少し下った所が、駒ヶ越の滋賀県側への下山点であり、標識も設置している。滋賀県側へ下る道は、テープ等の目印は付けられているようであるが、道が消失している部分もあり、この道を使われる場合は、別途他の資料等で、確認してから入ってほしい。
この駒ヶ越の地点から、なだらかな尾根が続き、二つ目の小ピークで、道は南東方向に曲がる。さらに小さなピークを越えると、道は稜線からはずれ、左手に入っていくが、ここには小さな池がある。水がある時期には、すばらしい雰囲気の所である。池の左手を回り込み、稜線に戻り、さらに稜線を進む。緩やかな登りを続けると、P744の手前の地点に着く。ここから、明神谷の林道へへ下って行くが、この分岐には標識がある。ここまで、駒ヶ岳山頂から、1時間程である。
分岐から、尾根を外れ、左に下って行く。この道は、植林の中の良く手入れされた道であるが、最近は歩く人が少なく、道に草が茂っている。最初は、右手に尾根をトラバースするように進み、2回Uターンをすると、稜線から10分程で、林道終点に着く。
ここからは、以前にマスの養殖場のあったところまで、約1時間強の林道歩きである。良く整備され、歩きやすい林道であり、周りの林の景色もきれいなので、あまり苦痛なく歩くことができる。しかしながら、さすがに林道歩きにあきてきた頃、マスの養殖場跡に着き、ここからキャンプ場への道がついている。ただし、このルートは、道が一部なくなっており、また、道のある部分も非常にわかりにくくなっているので、ルートファインディングに自信のない方は、入らない方が良いだろう。なお、この林道をそのまま進めば、30分程で白石神社跡に行くことが出来る。
養殖場跡の廃屋に続く橋を渡り、廃屋の裏を通ってから、標識に従って、左手の道に入る。杉林の中をゆっくりと登っていく。しばらくで、電柱があるが、これからしばらくは電柱を追いかけるように登山道が続いている。やがて、道は沢の左岸を進むようになる。このあたりから道は不明瞭になってくる。右の斜面に上がる踏み跡のようなものがあるが、まどわされずに電柱を追いかけるように進む。
元マス池の標識から25分程の所の杉林の中で、道らしきものも完全になくなる。前方には、電柱が2本見え、左手の沢には、滝がかかっている。ここは、杉林の中の踏み跡を辿ってまっすぐに登る。20mほど登ると、はっきりとした水平道が右手に伸びている。
ここまで来れば道ははっきりしている。部分的に道が崩れているが、しっかりとした道が続いている。やがて沢を渡るが、ここには朽ちかけた橋が架かっている。この先は、道はもっと良くなり、何回か折り返しながら登っていく。稜線に出ると、そこは左:森林公園、右:白石神社の分岐であり、左手すぐに森林公園の避難舎が立っている。
元マス池の標識から森林公園まで約1時間ほどである。(このコースは、現在通行不能です。2022.5.9追記)
■コースタイム
駒ヶ岳→60分→尾根分岐→10分→林道終点→70分→マスの養殖場跡→60分→森林公園
(白石神社跡に戻る場合)
マスの養殖場跡→30分→白石神社跡