若丹国境の背稜山脈より海側に位置するこの山は、標高584mと、近くの山々と比べて見劣りするが、独立峰で、形の良い山である。若狭の漁師達は、この飯盛山と西の青葉山、東の多田ヶ岳を結んで、船の位置を確認したと伝えられ、3つの山を若狭三山と呼ぶ人もある。
飯盛山へ登るルートとしては、以下のルートがある。
①小浜市加斗(法海集落)の飯盛寺からのルート
②小浜市加斗の上加斗林道からのルート(2015.12現在、通行不可)
③小浜市中名田の見谷集落からのルート
これらの内、やはりメインとなるのは古くからのルートである①のルートは、途中道が荒れている部分があり、しっかりとしたリーダーの下、登る必要がある。②のルートは、道はしっかりとしているが、林道が長いので、下山ルートとして使うのが良いだろう。③のルートは、比較的よく整
備されており、登りやすい。
以上のような状況であるので、本書では、③の見谷からのルートをメインルートとして紹介し、サブルートとして、飯盛寺から登り、上加斗林道へ下るルート(①+②)を紹介したい。なお、飯盛寺からのルートの下部は、沢沿いを歩くコースであるが、沢沿いで滑りやすい所もあったので、2022年に、尾根コースを整備したので、併せて、紹介します。
(2015.12現在(2019.4時点でも)、上加斗へのルートは通行不可なので、気をつけて下さい)
①見谷から飯盛山へ ■対象:中級コース
小浜から車で国道162号線を南下し、京都方面に向かう。約10kmの所にある中名田の交差点を右折し、小屋方面に向かう。和紙の里である和多田集落を過ぎ、さらに進むと、交差点から約4kmの所に見谷というバス停がある。なお、バス停近くには、少し古くなった案内看板が設置されている。
バス停手前を右折し、集落の中に入るとすぐに林道(別所谷線)となる。この林道を約1km行くと、幅の狭い橋を渡りすぐに車を3台程度止められる場所に出る。車で来た場合、ここに駐車できるが、途中の林道の状態があまり良くないので、林道入口付近にある空地に駐車させてもらうと良い。
林道終点手前の駐車場所から50m程進むと、登山口の標識があり、左手の沢道に入る。ここから尾根の取付きまでが、増水で荒れている場合があるので、慎重に進んでほしい。沢を2回渡り、沢沿いの急な道を行くと、しばらくで、右手の尾根に取り付く。急な尾根上を、ジグザクの道を伝って、高度を稼ぐ。所々植林帯はあるものの、雑木林の気持ちの良い尾根である。登山口から30分弱で道は右にトラバースし始め、沢の源頭を越えて、一つ右の尾根に取り付く。この辺りは、道を見失わないように注意が必要である。
尾根上は急な登りであるが、道はジグザクに付けられ、しっかりしている。やがて空が明るくなり、このコースで最も美しい雑木林を通過すると、支尾根の上に出る。登山口からここまで、約1時間弱であり、休憩するには良い場所である。
支尾根に出た所から、赤松の尾根をしばらく登ると、分岐に出る。直進方向は、最近開かれた直登コースで、従来の道は左にトラバースしていく。
ここからは、従来の道を紹介する。道は左へトラバースする。所々道が分かり難くなっているが、慎重に道をたどれば迷うようなことはない。一つ目の尾根を越え、さらにトラバースし、二つ目の尾根に出た所で左手に下って行く道と出会う。この道は、上加斗林道に続く道で、下ればJR加斗駅に出ることができる。ここには、標識が設置されている。(2020.5現在、上加斗方面へは通行不可です。)
この分岐から少し登ると、さらに左へ回り込むようになり、やがて山頂に続く道のある尾根に出る。この道を登ること約10分で飯盛山の山頂に着く。山頂には、二等三角点と山頂の標識がある。比較的広い広場となっており、昼食をとるには最適の場所である。山頂の周囲は部分的に高い木に囲まれており、360度の展望とはいかないが、小浜湾とその右に多田ヶ岳、遠くに百里ヶ岳が望まれる。西の方には青葉山、そしてさらに左手には八ヶ峰方面の山々が望まれる。
下山は、車で来た場合は、元来た道を引き返すことになるが、バス利用の場合は、上加斗林道又は、飯盛寺経由でJR加斗駅に出ることができる。これらのコースについては、それぞれのルート案内を参考にしてほしい。(2019.4現在、上加斗コースは通行不可です。)
(2020.5.29最終踏査、一部修正)
■コースタイム
見谷バス停→15分(15分)→林道終点→60分(45分)→支尾根→40分(30分)→飯盛山山頂
( )内は、逆コースのコースタイム
②飯盛寺から上加斗林道への縦走 ■対象:中級コース
(注)2019.4現在、林道上部斜面崩落のため、上加斗林道方面へは下れません。(歩いての通過も危険です。)
JR加斗駅を起点にする場合、駅前からJR小浜線に沿って小浜方面に進み、一旦国道27号線に出て、加斗小学校前の交差点を右に入り、飯盛寺(はんじょうじ)に向かう。法海(のりかい)の集落を過ぎると、登りとなり、しばらくすると飯盛寺への入り口が左にあるが、そのまま直進する。左手に「深山飯盛寺」の石柱を見て、さらに進むと登山口に出る。ここまで、加斗駅から徒歩約50分であり、ちょっと一服しよう。
飯盛寺は、天台宗の古刹で、重要文化財である薬師如来を祀り、1300年の歴史を持っており、時間が許せば、途中寺に参拝してこよう。また、登山口の先は行場となっており、滝が懸っている。なお、車で来た場合は、左手の寺の入り口に入り、寺の駐車場を利用させてもらう。駐車場は有料なので、駐車料金を納める必要がある。
さて、登山口の標識の所から登り始めると、すぐに道が二手に分かれるが、ここは標識に従って右の道を進む。川の右岸(下流に向かって右手)の竹林の中の道を少し進むと、道は沢を渡り、左岸を進むようになる。少し登った所で右から来る道と合流するが、この右からの道を戻ると先ほどの滝の上に出てしまうので、下山にこのルートを使う場合は、要注意である。標識も設置されているので、注意して進んでほしい。ここからは杉林の中の道で、道は左岸に付けられている。登山口から、約10分ほどで、右手に尾根コースに入る道がある。ここには、標識が設置されており、見失うことはない、この尾根コースについては、後段に紹介するとして、ここは、従来の谷コールを紹介する。尾根コースの分岐から少し先で、沢は二つに分かれる(気が付かない内に通り過ぎるかもしれない)が、道は右の谷の左岸に付けられている。この辺りは下草が繁っており、ルートを見失わないように慎重に進んでほしい。
やがて道は沢筋から離れ、右手の斜面に取り付くが、その左手の下にナメ滝が見える。ここまで登山口から約30分であるが、このナメ滝は、登り、下りの際の目印となる。取り付きから先は急で、特に下りは要注意である。その先の斜面沿の道も滑りやすく、特に雨上がりの後は注意を要する。道はナメ滝を高巻くように進むが、やがて沢から離れ左岸の雑木林の中を急登するようになる。5分ほど登ると、再び沢沿いの道となり、一旦右岸に渡り、すぐに左岸に戻る。ここからは標識に従って、再び左岸の斜面を登り出し、ナメ滝の所から約30分で尾根上に出る。なお、途中に左手に少し下る所があるが、その付近は道を見失わないように、要注意である。標識、テープに従って、慎重に進んでほしい。
【尾根コース】
分岐の標識から、右手の斜面に向かって登り出す。杉の植林地で、道らしきものはないが、緩斜面なので、標識、赤テープを頼りに登っていく。しばらくで、植林も終わり、自然林の林となる。最初のうちは、沢沿いに登っていくが、途中から左の尾根に取り付く。その後、斜面は急になるが、特に危険箇所はない。分岐の標識から、20分ほどで、尾根に出る。ここにも、標識を設置している。ここからは、尾根上の踏み跡を辿って進む。比較的歩き易く、わかりやすい尾根なので、迷う心配はない。P357を越え、次の410m程のピークを越えた辺りで、谷コースと合流する。尾根に出た所から、約1時間である。
尾根に出た所は、1/25000地図上の357m地点の南で、400m付近を過ぎたあたりである。ここには、分岐の標識を設置している。ここからは、尾根上を進むことになり、道はしっかりしてくる。ただ、右側は杉の植林、左側は雑木が立ちふさがり、展望は期待できない。先程登っていた沢の源頭部を過ぎると、道は杉の植林帯の中の急登となる。5分程急な登りを続けると、左からの尾根と合流する。尾根に出た所からここまで約15分で、この辺りは広場となっており、休憩するには良い場所である。なお、下山にこのルートを使う場合、この地点で左に曲がることになるが、標識を見落とさないように注意する必要がある。左手の尾根の先は、口名田の大黒山へと続いている。
ここからは、ブナなどの疎林の尾根を進む。以前蔓延っていた笹が無くなり、とても気持ちの良い尾根で、所々で木々の間から小浜湾方面が望まれる。上り下りを繰り返すと、最後の登りとなる。15分程急な登りを続けると、山頂に着く。
山頂は広場となっており、昼食をとるには良い場所である。展望も、360度とはいかないが、周囲の海と山の展望を楽しめる。
(2022.6.19再踏査、一部修正および尾根コース追記)
(この先、上加斗方面へは、2019.4現在通行不可です。)
休憩と展望を楽しんだら下山することにしよう。下りは、登って来た方向と反対側の尾根に付けられた道を進む。5分程急な下りを続けると、道は左へトラバースするようになる。この辺りから小浜湾方面の視界が開けるようになり、この先林道に出るまでの間、展望を楽しむことができる。トラバースを続け、涸沢を過ぎ、もう少し進むと、下山を始めた尾根より1本左側の尾根に出る。尾根に出た所から少し下った所の左側に、見谷へ下る道があり、ここには標識が設置されている。ここからの下りもかなり急で、道はしっかりしているものの、左右からの小枝が少しうるさい。檜の植林が両側にある尾根を下って行くと、小さなこぶを越えて少し進んだ所で、道は尾根から分かれ、右にトラバースし始める。ここまで山頂から約30分である。右に進んでいた道が左へ曲がり、さらにジグザグに下って行くと林道に出る。山頂からは約45分である。なお、登りにこのコースを使う場合、標識と階段(半分位土砂に埋まっている)が目印となる。
ここから加斗駅までは、約1時間30分、林道と一般道を歩くことになる。途中何カ所か林道を分けるが、分岐点には標識があり、登りにこのコースを使う場合でも、標識に従えば道に迷うことはない。
(注)逆コースも考えられるが、上加斗側の林道歩きが長いこと及び上加斗側登山口からは急登の連続となることから、あまりお奨めできない。
■コースタイム
JR加斗駅→50分→飯盛寺(登山口)→30分→ナメ滝→30分→尾根(谷ルート、尾根ルート合流)→15分→ 尾根分岐→25分→山頂→
45分→林道→90分→JR加斗駅
【尾根ルート】飯盛寺(登山口)→10分→尾根ルート奮起→20分→尾根(左折点)→60分→尾根(谷ルート、尾根ルート合流)
(2019.4在、山頂より上加斗(林道)方面へは、通行不可です。)